潮風の電話

先日、中日新聞に
「潮風の電話」という記事が載っていました。

亡くなった大切な人と、電話で繋がるための
公衆電話です。

これは岩手県にある
「風の電話」をまねて作られたとのこと。

「風の電話」は、

東日本大震災で他界されたかたへの思いを
遺族が伝えるため、
岩手県に設置されている
電話ボックスです。

この記事を読んで、

私は、

私が出会い、

関わらせていただいた、

たくさんの

お亡くなりになった患者さんのことを
思いだしました。

重度の脳性麻痺で、
ことばは話せないし、座ることもできないRしゃん。

診察のたびに、わーわー泣いて

あんなに慣れてくれない子も少ないくらい(/_;)

でも、音楽療法の発表会では

母の膝に抱っこされ

母と一緒に めちゃめちゃな笑顔で、
太鼓をたたいていました。

母も
Rくんを、溺愛していました。

アテトーゼの脳性麻痺で、
首もしっかりしていなかった Kちゃん。

そのうえ全盲で、
顔も見えないのに

声を掛けると、私とわかってくれて

「先生、だいすきだよ~!」

いつもそう言ってくれました。

 

痙直型四肢麻痺のSくん

いつも笑顔でニコニコだった。

前々日まで、クリニックに訓練に来てくれて
いたのに

突然 デイサービスで

窒息…

生まれながらの筋肉の病気で

ずっと車いす生活で 

でも

成人式を迎えられたことを、
母とお祝いし、

障がい者スポーツ「ボッチャ」では
海外遠征も。

そしてなんと1位!

金メダルと一緒に、写真も撮りました(^^)/

私の大学の講義にも 来てくれて

医者の卵の学生さんの前で

「将来の夢は、東京パラリンピック」

そう言っていたDくん。

たくさんの死と 直面するたびに
私が思うことは

障がいを持った子どもたちは、

毎日、精一杯生きていて

予備能力がすごく少ないということ。

毎日見ていると

つい当たり前のように 思ってしまうけれど

そうではないということ。

ぎりぎりで生きています。

極端な話、

SaO2(動脈血中の酸素飽和度)が
普段から、すごく低い子もいる。

最初にその値を見ると、
びっくりしてしまうけれど、

慣れてくると なんとも思わなくなってしまう。

でも実際は、その子は決して楽なわけではなく、

ぎりぎりで頑張っているのです。

それを常に頭に置いておかないと、
大変なことになります。

私は小児科医でも、内科医でもなく、

悔しいけれど、

その子たちの命を救ってあげることができません。

だからせめて、

少しでも楽に、長く、楽しく

生きられるように、

シーティングを工夫したり

装具を作ったり

リハビリを考えたりしています。

それしかできません。

毎日、クリニックで

子どもたちを

一期一会の気持ちで

迎えています。

今日会えたことは、

あたりまえではない。

今日も会えて、本当に嬉しい(*’▽’)。

ありがとう!

そう思って、日々診療しています。

痙性を緩める!

後弓反張、という言葉をご存知でしょうか?

頭の先から足の先まで、弓のように反らせ、
両腕もまっすぐに伸ばした姿勢で
突っ張っている赤ちゃんを
見たことがありますか?

これは、痙直型四肢麻痺
或いは不随意運動型の脳性麻痺患者さんに
ときに見られる姿勢です。

とにかく体中に力が入って

赤ちゃん自身も苦しそう…

こんなとき、どうしたらいいでしょう??

私なら、
まずゆったりした気分で
赤ちゃんに声を掛けます

しっかりあおむけの姿勢を取らせ、

股関節と膝をゆっくりと曲げていくんです

(このとき、からだが横を向いていると
関節に無理がかかるので要注意です)

そして首の後ろに手を入れて、
首の反りを防ぎながら

抱き上げます。

背中を丸くしてあげると

突っ張って 弓のようになっていた体の緊張が
一気に落ちます。

ここで大切なことは

1. 赤ちゃんの心の緊張を緩めること
2. 関節・脊柱を曲げ、丸めること
3. とにかくゆったり行うこと

この3点です。

心の緊張は、からだの緊張につながります。

後弓反張の姿勢になるきっかけは

心の緊張であることが多いんです。

それは痛みであったり、

音や声に対する反応であったり、

不安や人見知りであったり、

ときに嬉しいことも、引き金になったりします。

だから驚かせてはいけないし、
不安を取ってあげることが大切。

これ、難しいですが…

次の関節や脊柱をまげる、ですが、

後弓反張は、全身が伸展してしまっている姿勢です。

これをよく、”伸展パターン”なんていうこともあります。

伸展パターンを崩すには、

どこかの関節を曲げること!

すべての関節が伸展しているときに、

一か所の関節を曲げると

不思議なことに

一気にこの伸展パターンが崩れ、

他の関節も曲げやすくなるんです。

股関節を曲げることで、

骨盤の前傾も軽減し、

それが脊柱の伸展も緩めることになり

抱きやすくなっていきます。

このとき、股関節に感じる

最初は強いけれど、曲がり始めると緩む抵抗、

これが”ジャックナイフ”様抵抗です。

後弓反張の姿勢の時、

ものすごい力で突っ張っているので

関節を曲げるのに
ときにかなりの力が必要なことがあります。

でも力比べになってしまうと
却って緊張が高まることも。

からだをさすったり、
「だっこしようね~」と
優しい声を掛けたり(^.^)、

ゆっくり優しく、
触ってあげてくださいね。

お母さんの肩に うつ伏せにもたれさせ、
そこから股関節を曲げていく方法もありますが

くれぐれも 赤ちゃんを落とさないように!!

股関節脱臼の治療:Rb法

股関節脱臼の治療について
お話しします。

生後3~5か月頃
股関節脱臼或いは亜脱臼、臼蓋形成不全のある場合

”リーメンビューゲル(Rb)” という
ベルトをはめます。

このRb法、1957年に、チェコスロバキアのDr.Pavlikが発表したものですが、

これが本当に画期的な治療法なんですね!!

 
というのは、それまでの脱臼の治療は

「はめて、ギプスでがっちり固める」

という方法が主流でした。

これ、主にLorenz法というんですが、

このLorenz法だと、脱臼が直ってから

なんと骨頭が死んでしまう!(骨頭壊死)という合併症が

非常に多く起きていました。

脱臼整復操作や、固定している間に、
骨頭への血流が阻害されるのでしょう。

これでは脱臼が直っても、
次の試練が待っています…((+_+))

ところが、Rb法では、骨頭壊死がほとんど起きない!
と言われています。

「下肢を動かすことによる筋力作用で、自然整復される」

すごい方法ですね!!

うちのクリニックでも、
RB法を行っています。

つけ始めてしばらくは、
ベルトを外せません。

その間、お風呂に入れられないので
クリニックでからだ拭きをします。

週に2~3回、通っていただくのですが

これが私たちには とても楽しみ(*^^*)

赤ちゃん 可愛いんですもの…(^-^;

不謹慎ですね スミマセン。

脳性麻痺の筋緊張異常

脳性麻痺の方は、少なからず筋緊張の異常があります。

筋緊張の異常には 3種類あるんです。

①筋緊張が高い(亢進)
②筋緊張が低い(低緊張)
③筋緊張が変動する 

今日は筋緊張が高い状態について説明しますね。

関節を他動的(自分じゃなくて他人が)に動かしたとき、
スムーズに動かず、抵抗を感じることがあります。

この原因は、

関節自体に問題がある場合と
関節を動かす筋肉に問題がある場合、
筋肉に命令を送っている神経に問題がある場合
大まかに言ってこの3種類に分けられます。

そのうち、最後の「神経に問題がある場合」
っていうのが、まさに脳性麻痺患者さんの場合ですね。

よく一般の方に説明するとき、
私はこんなふうに説明します。

「例えば、肘を曲げようとしたときに、
皆さんは曲げること
(つまり肘の前にある、曲げるために収縮する筋肉)
ばかり意識しているけれど、
スムーズに曲がるためには、
肘の裏側にある、伸ばす筋肉が緩まなくてはいけないですよね。
脳は、意識しなくてもちゃんと調整してくれているのです。
脳性麻痺の方は、
それが上手に調整できない。

使いたい筋肉の、反対側の筋肉の力を抜くことができないので
スムーズに動かすことができないんですね。
これを筋緊張が高い、と表現します。

正確な表現かどうかはともかく、
なんとなく、わかっていただけたでしょうか??

うまく緩めることが苦手な筋、つまり
筋緊張が高くなりやすい筋肉として

足首を底屈(つま先立ち方向)する下腿三頭筋
膝を曲げるハムストリングス
股関節を内側に引っ張る内転筋など

個人差は非常にあるものの、
ある一定の傾向があります。

これを緩めることが、
運動発達を進めるひとつのポイントになります。

ダウン症児の知的能力と性格

ダウン症についての7回目。
知的能力の特徴と、性格についてです。

ダウン症児の知的能力の特徴として、

 数の概念が弱い
 生活習慣能力が高い
 移動能力も高い
 目で見て判断し、目で見て手で操作することが得意
です。

では性格は?

 明るくて、純真、素直、優しい、
 協調的で社交的、
 人なつこくて愛想がよい
 模倣がうまい!   といった面と、
 
 頑固でこだわりがあり、融通が利かない
 わがまま、動作が遅い
 気分のむらがある
 気持ちや場面の切り替えがうまくない、
 といった面も。

これらは一見矛盾する印象ですが、
相手や状況、場面によって
これらの要素が絡み合って表出するとのこと。 by橋本先生

なんとなく、うなずけちゃいますね。
人間って、誰でも
良い面と、それを裏返した悪い面と
両方ありますよね。

”動作が遅い”は、”几帳面” だったり
”活発”は、”落ち着きがない” だったり

だから、その性格の、良い面が出せるように
社会生活を過ごしやすくなるように
外からの働きかけで、
誘導出来たらいいですよね。

これはダウン症に限らず
子育て全般に言えること。

大人育てにも、自分育てにも
きっと共通しているのでしょうね。

ちなみに私の性格は
 素直:すぐに信じる 騙されやすい
 一途:周りが見えない 空気読めない 気がつかない
 社会に貢献するため、努力を惜しまず突き進む:わがまま 家庭を放棄 家族に迷惑 (;^ω^)

失礼いたしました。

あともうひとつ、お伝えしたいことがあります。

よく、
「この子はダウン症だから、頑固で…」
とか、
「ダウン症だから顔が…」
っていうご家族がいらっしゃるのですが

染色体が一つ多いだけ。

すべては、
もともとお母さんとお父さんからもらった遺伝子です。

親御さんにそっくりなところ 
いっぱいありますよ!(*’▽’)

脳性麻痺の分類

今日は脳性麻痺の分類について
もうちょっとわかりやすい話をします。

麻痺の型による分類

① 痙直型
② 失調型
③ 不随意運動型(アテトーゼ)
④ 弛緩型

麻痺の左右の分布による分類

① 両側性
② 片側性

麻痺の上下肢の分布による分類

① 上肢優位
② 下肢優位
③ 四肢

こんな分類が、以前から使われています。

例えば、
「痙直型右片麻痺」とか
「痙直型両麻痺」
「アテトーゼ混合型痙直型四肢麻痺」
などなど…

脳性麻痺の分布には特徴があります。

両麻痺とは、
両下肢に麻痺が明らかで、
上肢の麻痺が、下肢に比べて軽い麻痺です。
歩行に支障をきたしていることが多く、
上肢は、器用ではないですが、
まあまあ使えていることが多いです。

それに対して、
片麻痺は、
右或いは左の上下肢に麻痺があるのですが、
多くの場合、下肢より上肢に症状が強く出ています。
ですから、歩けることが多いです。
ですが、麻痺側の上肢は、ほとんど使えないことも。

四肢麻痺は、
全身の麻痺が強く、
くびも座っていない、あるいは
座れないなど、
重症の麻痺であることが特徴です。
知的障害も、重いことが多いです。

四肢麻痺と両麻痺の区別は 実はあいまいで、
迷うこともしばしばあります。

あとひとつ!

対麻痺、という言葉がありますね。
これも、両下肢に麻痺があるときに使う言葉ですが、
脳性麻痺にはほとんど使いません。

対麻痺とは、
脊髄損傷などのように
麻痺のレベルが はっきり分かれていて
麻痺のレベルより上には、全く症状がない場合に使用します。

脳性麻痺では、そういったことはあまりなく
上肢にも若干の麻痺があることがほとんどです。
ですから、脳性麻痺の場合には
“両麻痺”という言葉を使います。

股関節脱臼と亜脱臼の違い

こんにちは!
今日は股関節脱臼・亜脱臼の区別について
お話しします。

なんとなくはわかるけど
実は難しいんですね、これが。

亜脱臼とは
完全に外れてはいないけれども
関節の袋が大きくなっていて
関節面がずれている状況。
或いはずれやすくなっている状況、と言えばいいでしょうか。

正確には、股関節の場合、
関節唇、という軟骨が
骨盤の屋根から外に伸びてついていて
大腿骨の頭を包む骨盤の屋根を大きくしているのですが

この関節唇の飛び越えて、骨頭が逸脱してしまうと脱臼、
関節唇を乗り越えていなければ亜脱臼、
といった見解です。

但し、実はこの関節唇、
レントゲンには映らないんですね(‘;’)。

なので厳密にいうと、
関節の中に造影剤を入れてレントゲンを撮る、
関節造影検査とか、
MRI検査などをしないと
区別がつかないこともあります。

もちろん、骨頭の位置が、レントゲン上
大きく臼蓋(骨盤の屋根)から飛び出していれば
レントゲンだけで充分診断がつきます。

完全に脱臼しているか
それとも亜脱臼なのかによって
治療方法が変わってきます。

だからその鑑別は、とても重要です。

触診上、簡単に整復される(元の正常な位置に戻る)場合、
亜脱臼のことが多いです。
ただし、整復されるときに
”クリック”と言われる手ごたえがある場合、
亜脱臼といえど
ずれは大きいことが予想されます。

以上は赤ちゃんの股関節脱臼だけでなく
脳性麻痺など
肢体不自由の方に起きやすい股関節脱臼についても
同じです。

今日はぜひ、股関節・関節唇で画像検索してくださいね!